祭を通じてみる、繋がりと温もりのあるコミュニティ ―浦安・三社祭2024ー

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Asako Iwano

少し前の話になりますが、2024年6月に、千葉県浦安市の三社祭(浦安三社例大祭)に撮影担当として参加させて頂きました。

神輿を低く下げ、ダイナミックな担ぎ
神輿を低く下げ、ダイナミックな担ぎ

浦安市の前身である浦安町はもともと、猫実(ねこざね)村、堀江村、当代島村が合併しできたもので、この地域にはそれぞれ豊受(とようけ)神社、清龍神社、稲荷神社という3つの神社が存在します。
私がご一緒したのは、豊受神社近くの入船会という町会。入船会の特徴は、神輿に加えて、纏(まとい)振りがいることです。

力強く纏を回す纏振り
力強く纏を回す纏振り

 

纏とは、もともと江戸時代に町火消が消火活動の際に目印等として用いた旗印の一種で、長い紙の房飾りがついたもの。祭りの中では、纏振りが纏を手に持ち振り上げたり回転させて舞う姿に、華やかさと力強さが漂います。
神輿と纏が出発すると、地域の親子連れが、焼きそば、綿あめ、かき氷などを求めて出店にやって来ます。祭りには、準備からガッツリかかわる人も、自分たちの生活スタイルに合わせて程よい距離感でかかわる人もいます。

多くの神輿が道いっぱいに練り歩く
多くの神輿が道いっぱいに練り歩く

浦安の神輿を担ぐ際の掛け声は「ワッショイ!」ではなく「まえだー!まえだー!」。諸説ありますが、神輿、山車の数も約80基と多く、住宅街を練り歩く神輿を少しでも前に前に進めてとの想いが込められているようです。
夜になっても、「まえだー!まえだー!」がずっと鳴りやみません。準備は2か月も前からのことと伺い、さぞかし大変だったろうと思います。お金もかかることですが、4年に1度のこの3日間にかける大人たちの想いは想像以上に熱く、祭りが終わってしまった瞬間の皆さんの切ない表情は、ああ、終わってしまったんだな・・とこちらまで寂しくなります。

祭りの最後には、三本締めの前に「木遣り(きやり)」の発声があります。
木遣りはもともと建設業をはじめとした人々の労働歌で、かつて人力で調子を合わせて重いものを運ぶ際に歌われていたものですが、今では冠婚葬祭や上棟式などのごく一部の限られた場面で歌われるのみとなりました。

若手もベテランの方も男女問わず参加されています
若手もベテランの方も男女問わず参加されています

お祭りから約1か月後、入船会の「砂っぱたき」に参加させて頂きました。砂っぱたきとは「農家が一連の農作業を終えて家に入る前に、疲れた体から埃や足元の砂を払う」が由来の打ち上げや宴会のことだそう。
砂っぱたきでは、入船会の歴史を語るご高齢の会長の話に若手たちも「貴重な話を聞き漏らすまい」とじっと耳を傾けている姿が印象的でした。また一方で、礎を築かれてきた70代、80代の方々からも「よく来たね、ありがとう、よろしくね」という若手への感謝と信頼の気持ちが感じられる。ああ、世代を超えて繋がるってそういうことか、と改めて感じ入るものがありました。

北島三郎の「まつり」で盛り上がり(サブちゃんの歌は、こういう時に歌うんですね)、最後はもちろん、どこからともなく「ピーピーピーピー!(笛の音)」「まえだー!まえだー!」の掛け声で締めくくるという、なんとも熱く賑やかな、浦安というまちの魅力と、人の温かさに触れた一日でした。